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『約束』 Case Vincent + Cloud
「助かった」
「偶然とは思えないほど良いタイミングだったな」
人里遠く離れた山の中、人の気配がすると思い探りを入れてみると、よく見知った相手だった。
もう何代目になるのだろうか、大型のバイクのあちらこちらを点検しては首を捻る金髪のチョコボ頭に声をかけると、故障でバイクが動かせないと言う。
「さすがに、コイツを押してあと数日歩くのは、な……」
「確かに面倒だな」
クラウドとバイクをその場に残し、ヴィンセントは街まで修理業者を呼びに行ってやったのだ。街の近くまでは飛べば良いので、あっという間だった。
そして今、動かなくなったバイクごと、二人は業者のトラックの荷台に乗せられている。
「いっそ、通信用の端末くらい買ったらどうだ?」
トラックを運転している修理工の男にも、なぜ端末も持たずにこんな山の中を走っていたのかと訝しがられた。
「あんたにだけは言われたくない」
空を見上げながら、クラウドはヴィンセントに答える。
「…………」
その答えに、返事をすることなく、ヴィンセントはバイクのハンドルに下げられた物を見た。
あちこち塗装の剥げた携帯端末が、トラックの振動に合わせてゆらゆらと揺れている。
とうの昔に通信方式が変わってしまって、今はもう使うことのできない電話だ。これが電話だということが解る人間も今では少ないだろう。
「あんたには、珍しくもないだろう?」
言外に、お前も同じだと言われている。
ヴィンセントの腰のベルトにも、同じく使えなくなった携帯端末がぶら下がっていることを、クラウドも知っているからだ。
「そうだな」
自分たちは似ている。過去を捨てられずに、いつまでも大事に持ち続ける。
ヴィンセントもクラウドに倣い、空を見上げる。
木々の上に、青空が広がっていた。
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