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Change of hearts

 カードと共に引き出しに入れられていたのは、小さな箱だった。
 ヴィンセントの片手に載るくらいの大きさのその箱には、綺麗に赤いリボンが掛けられている。 

「開けても?」
と聞くと、セフィロスはどことなく嬉しそうな顔でこっくりと頷いた。


 リボンをほどき、箱の中から出てきたのは、チョコレートだった。
 どういった経緯でこれを用意したものかと不思議に思うが、問い質すのも野暮だろう。屋敷のメイドあたりが手を貸したに違いない、と考えれば不思議でも何でもない。

「ありがとう」

手の中の贈り物をしみじみ見つめると、言葉にし難い嬉しさがこみ上げてきて、もう一度セフィロスを抱きしめた。


 ぎゅうと子供に抱き締め返されて、そのまま銀の髪を撫でていると、突然の宝探しに忘れかけていたとある物の存在を思い出した。
 タイミングが良いのやら悪いのやら、微妙に判断に迷うところだが、ヴィンセントがスーツのポケットから取り出したそれも、小さな箱である。こちらには、淡い碧色のリボンが掛けられていた。

「私からもプレゼントだ」
「……?」

 不思議そうに首を傾げたセフィロスだったが、すぐに笑顔になると、ありがとうと礼を言い箱に手を掛けた。

「あけていい?」

 もちろん、と頷いてやると、セフィロスは箱を開けにかかる。
 そして、中から出てきたものは、
「おんなじだね」
チョコレートであった。


 偶然にも同じ贈り物を同時に用意してしまったことに、セフィロスはすごいね!と喜びくすくすと笑う。
 ひとしきり喜んだあと、ふと何かを思いついたらしく、にっこりと笑うと、ヴィンセントが手にしているほうの箱からチョコレートを取り上げた。

「はい。あーんして」

 口の前に突き出されたチョコレートに面食らい、セフィロスの顔とを交互に見つめると、はやくと急かれた。
 観念して口を開こうとして、しかしその前に、碧色のリボンが掛かっていたほうの箱から中身を取り、セフィロスの口元へと持って行く。
 
「あまーい」

 口を開くと、予想通りに甘い味が広がった。
 あたたかい、しあわせの味だと思った。
* * *
『the last Letter』お買い上げ、並びにおまけにお付き合い頂きありがとうございました。
発行時期が時期だったので、バレンタイン風味…になっておりますが、べったべたに甘いお話でまぁ……ご、ごちそうさまです(笑)
親子は徹底的に甘々で良い!と全力で主張いたしたい所存です。
この疑似親子ヴィンセフィはサイトでまだまだ展開していく予定ですので、そちらのほうでもまたお付き合い頂ければ幸いです。

2010/02某日 霧月