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dragoon meets a silver kitten

 雨の夜だった。

 人里から離れた森の中では、魔物同士の食い合いなど珍しくはない。
 また同様に、魔物が森に住む動物を狩ることも珍しくはなかった。
 だから常ならば、そんな光景を目にしたところで、足を止めることすらしなかった。
 下手に関われば、今度はこちらが標的にされる。森に住む魔物程度に後れをとることはないが、無用な命を奪う必要もない。そう考えていた。

 それなのに、なぜ、この時に限って足を止めてしまったのだろう。

 大型の鳥の姿をした魔物に、黒と茶色の斑に汚れた毛玉が突き回されていた。
 決して、助けようと思ったわけではなかった。
 両手にはそれなりの量の荷物を抱えてもいた。
 面倒だとすら思った。
 だが、抱えていた荷物を、雨に濡れぬよう大きな木の根元に置くと、小さく嘆息して腰に佩いた剣を抜く。飛行型の魔物ならば、いつも手にしている槍のほうが都合が良いのだが、村へ出向いた帰り道なのだから、仕方がない。

 ギャア!と一声高く啼いて、こちらを目掛けて急下降してきた魔物を、軽く跳躍し、地面に縫い止める。
 一撃で決着は着いた。
 魔物が動かなくなったことを確かめて剣を抜く。二、三度振って血を拭い鞘に収めると、つい先ほどまで魔物に小突かれていた毛玉がまだすぐそこにいたことに気が付いた。
 薄汚れた小さな生き物が、魔物に襲われた恐怖からか、それとも雨の冷たさ故なのか、ふるふると震えている。
 だが、近付いてみるが、何故か逃げ出そうとする様子もない。
 傍に寄って見下ろすと、足下で泥まみれの茶色の毛玉が、ニャァと小さく鳴いた。

「……猫だったのか」

 思わず呟くと、再び毛玉のような子猫がナァと短く鳴いた。
 近くに親猫はいるのだろうか。

「命拾いしたな。もう喰われるなよ」

 子猫を見下ろしたままそう告げると、少し離れた場所に置いた荷物を取りに行く。
 袋の中身は主に食料だ。修行と称して山籠りをしているが、時折、近くの村や町まで下りることもある。もっとも最寄りの人里でも徒歩で半日はかかるのだが。生活に必要なものはだいたいそこで手に入れている。

 荷物を拾い上げ、踵を返した。
 よたよたと、さっきの子猫がこちらへ歩いてくるのが目に入る。
 さっさと立ち去ることの出来た。
 だが、荷物を抱えたまま立ち止まってしまったカインの足元に、歩いてきた子猫が擦り寄る。

「……俺はお前の保護者じゃないぞ」

 雨に打たれたまま、呆然とそう呟く。

「ニャァ?」

 小さく首を傾げて、まるでカインの言葉に返事をするかのように、三度子猫が小さく鳴いた。

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