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First Kiss
ファーストキス
「お酒飲めるようになるにはどうしたらいいと思う?」
「……は?」
目の前の親友が、突拍子もないことを、予想外の場面で言い出すのはいつものことで、それが想定外のタイミングだというのもいつものことではある。
従って、意表をついた質問を投げかけられたカインの答えは、驚きの声というよりは、呆れ半分に不審が半分といった様子に近い。
先日、十六になったばかりのセシルは、まだ幼さの残る顔でカインを見上げ首を傾げている。
「とりあえずだな……」
「うん」
そんなセシルの頬についた泥の汚れを指先で拭ってやりながら、カインはしばし考える。
「……ひとまず、うちに来い。明日、非番だろう?」
「明日と明後日も休みだって言われた」
「だったら、夕飯はうちでいいな」
「いいの?」
「その格好でどこに行けるって言うんだ」
「あー……」
そこでようやく自分の出で立ちに思い至ったのだろう、セシルが苦笑する。
セシルは初めての城外での演習から帰ってきたところなのだ。わずか三日間とはいえ、野外で過ごした格好はお世辞にも身綺麗とは言い難い。
常識的には、余所の家を訪ねるような格好でもないが、セシルがハイウインド家に顔を出すのは、実家に立ち寄るようなものなのでこれでも問題はない。子供の頃は、カインと一緒に泥まみれになって遊んだ後で、屋敷に行くことも珍しくはなかったくらいだ。
「行くぞ」
屋敷に帰ったら、とりあえずセシルは風呂に放り込んで、さっきの訳のわからない質問は、その後に食事を摂りながら聞いてやればいいだろう。
カインはそう決めると、セシルを促し歩き出した。
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