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When I Wish Upon a Firework

「あったかいねぇ」

 広場の中央では、大きな炎が燃えている。
 薪を高く組み上げ、陽が落ちる頃に火が灯されるのだ。最初はかなり高かったはずの組み木は、すでに大半が燃えてしまっている。
 花火が終わると、この火も消されて、それで祭りも終わるのだ。
 
 ようやく辿り付いた広場で、火に当たりながら二人は夜空を見上げる。
 純粋に花火を楽しみたいのならば、明るい火の側より、離れた場所から見たほうが綺麗なのだろうが、やはり真冬の真夜中だからだろうか、火の周りに集まってくる人は多い。

 ここまでの大通りほど人は多くはないが、二人はまだ手を繋いだままでいた。
 花火もそろそろ佳境になるのだろう。
 最初は一発ずつだった打ち上げが、少しずつタイミングをずらしながら数発ずつ打ち上げられるようになり、途中、小振りの花火を何発も打ち上げるような演出も織り交ぜ、いよいよクライマックスを迎えていた。
 大きな花火が、息を吐かせぬほど立て続けに空に上がっていく。
 
「花火、今も嫌いか?」
「え?」
「昔……ずっと前だけど、嫌いだって言ってたのをさっき思い出したんだ」

 花火を見上げながら、カインがそう言った。
 そんなカインをちらりと見て、けれどもセシルもまたすぐに空を見上げる。
 
「あのね。花火も、美味しいお菓子も、お天気の良い日も、どんなに綺麗なものも、ひとりぼっちだったらぜんぶ嫌いだよ」

 セシルは笑いながらそう答えた。
 そんなセシルの答えに、カインが不思議そうにさらに尋ねた。

「……ひとりじゃなかったら?」
「大好きだよ」

 繋いでいた手をそっと離し、今度はカインの右腕にぎゅうと抱きつきながら、セシルは嬉しくて楽しくて笑顔になる。
 カインが教えてくれたのだ。
 セシルがずっと嫌いだと思っていたものは、ひとりぼっちだったからなのだ。
 だから、カインと一緒にいれば、全部好きなものに変わるのだと。

「そうか……」

 カインが呟くのと同時に、花火の最後の一発が打ち上がる。
 大きな大きな、これまでで一番大きな花が空に咲いた。
 
「もう『今年』になったんだよな」
 年が明けたことを確認するカインに、セシルはうんと頷く。
「あのね、カイン。……今年も一緒にいてね」

 消えて行く花火を見送りながら、少し言い淀んだ後で、けれどもセシルにとっては一番大切な今年の願いごとを口にした。
 するとカインが驚いたような顔をして、すぐに少し皮肉げに笑った。
 
「今年だけでいいのか?」
「え? え?」
「いいのか?」

 だめ押しのように、カインが笑う。
 
「やだよ! 来年も、その次も、その次の次も、えっと次の次の次の……あれ?」

 慌てて答えるが、なんだか訳が分からなくなってしまった。
 首を傾げたセシルを見て、カインがついに声を上げて笑い出した。

「わかったよ。来年もその次も、ずーっと一緒だな」
「うん!」

 あっという間に願いごとを叶えてくれた親友に、
 
「来年もその次も、ずーっと一緒だよ」

 同じ言葉をセシルも約束した。

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