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When I Wish Upon a Firework

 どぉん!どぉん!と地響きのような音と共に、真っ暗な空に花火が上がる。
 
「……カイン……どこ……?」

 大きな声で叫んでも、花火の音と人々の歓声や話声で届くはずがない。
 それでもカインの名を呼んでいないと不安に押し潰されそうで、セシルは小さな声で親友の名を呼び続けた。
 姿を探して周囲を見回すが、周りにいるのは見知らぬ大人ばかりだ。
 自分よりもずっと背の高い大人に囲まれ、だんだんと息苦しくなってくる。人混みを掻き分けても、そこにいるのは見知らぬ人ばかりで、だんだんと自分がどの方向を向いているのかさえわからなくなってきた。
 昼間何度も通っているはずの道なのに、目に入るのは知らない他人の壁ばかりで、ここがどこなのかもわからない。
 場所も方向さえも見失い、目が回る。
 それでも精一杯我慢して周囲を見上げるが、ぐらぐらと目眩がする。セシルはついに俯くと、カインの名を呟きながら、ふらふらと歩き出した。
 
「あ……」

 無意識に人混みを避けようとしたのだろう。
 気が付くと、道の端に植えられた大きな木の下にいた。
 木の幹に寄りかかり、ずるずると座り込む。
 カインを捜さなければいけないのに、気分の悪さと息苦しさに、足が震えて立ち上がれそうになかった。
 
「うぅ……」

 怖い。
 
 花火が上がる度に、大きな音がする。
 火薬を燃やす爆発音。
 幼い頃を思い出す。
 城の西塔にある、一人きりの部屋。
 真夜中とは言え、あんな大きな音がすれば眠れるはずもない。
 ひとりぼっちの部屋で、轟く爆音は不安と恐怖を煽るばかりだ。
 ただただ怖くて寂しくて、花火が大嫌いだった。
 
 六歳の冬、初めてカインと一緒に花火を見た。
 カインの両親も一緒だった。
 今と同じ、街の中で、カインと手を繋いで見た花火は、それまで見た花火とはまったく別のものに見えた。
 空に咲く色とりどりの光の花はとても綺麗で。
 あんなに怖かった打ち上げの音も、なんだか楽しく聞こえたくらいだった。

 あれからずっと、毎年一緒に花火を見ていたのに。
 一人はもう嫌なのに。




 お揃いの紺色のマフラーに顔を埋める。
 耳を塞いで、蹲る。
 嫌な音が遠ざかって、少しだけほっとした。
 
「カイン……」

 耳を塞いでいるからだろう、自分の声が妙に大きく反響して聞こえる。  

 どれだけそうしていただろう。
 
「セシル」

 ずっと待っていた声が聞こえた。
 周囲の音を遮断していたはずなのに、その声は、セシルにちゃんと届くのだ。
 
 マフラーに埋めていた顔を上げる。
 目の前に膝をついてセシルの顔を覗き込もうとしていたカインに抱きついた。

 耳を塞いで、蹲る。
 嫌な音が遠ざかって、少しだけほっとした。
 
「カイン……」

 耳を塞いでいるからだろう、自分の声が妙に大きく反響して聞こえる。  

 どれだけそうしていただろう。
 
「セシル」

 ずっと待っていた声が聞こえた。
 周囲の音を遮断していたはずなのに、その声は、セシルにちゃんと届くのだ。
 
 マフラーに埋めていた顔を上げる。
 目の前に膝をついてセシルの顔を覗き込もうとしていたカインに抱きついた。

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