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Happy Birthday!

なんだかんだと今年もギリギリながら頑張ってみました。
ってことで、ヴィンセント誕生日を祝ってみる。

ええ、まぁ、先週の半ばくらいまでは覚えてたけど、週末にはすっかり忘れてたんですが。
昨日の夜中(日付的には今日か)、耀さんとこの日記見に行かなかったら間違いなく華麗にスルーしてたし(笑)
朝の電車の中でネタ出しして、昼休みを使って書き始めたというギリギリっぷりです。
でも確か去年は間に合ってなかったんで、今年は日付変わる前に間に合っただけ進歩か。
……ただし、非常に短いですが(笑)
気が向けば、加筆・修正した上でサイト収録します。
なので、今日はココに置いときます。

なぜか裏の人たちで、健全すぎるハナシです(笑)



 涼しげな秋風に乗って運ばれてくる微かな音楽に耳を傾ければ、それは聖誕祭を歌った歌謡曲だった。
 時期としてはまだ少し早いだろうにと思いながらも、記憶にはないがありふれた歌詞とメロディを何とはなしに聞き流す。
 部屋の隅には、古ぼけたラジオが置いてある。
 本来生きていたはずの時代から、長い年月が流れているはずなのに、その古びた機械はセフィロスが知っていたラジオととても近いものだった。相当な骨董品であることは間違いないのだが、手持ちぶさたに時折スイッチを入れれば、時折ノイズを混じらせながらも、遠く離れた何処の町からの情報を流してくれる。
 聖誕祭が近づくと、今は廃墟になったこの街もかつては様々な飾り付けがなされ、派手なイベントが多数行われていた。
 あの頃も、そして今もだろう、祝う意味などどこかに置き去りにした馬鹿騒ぎと化しているが、本来は、神の子の生誕を祝う日だったはずだ。
 実在したかどうかも怪しい、大昔に生きた赤の他人の誕生日というわけだ。
 
「…………」

 見知らぬ過去の人物の誕生日は知っているのに、自分自身の誕生日は知らぬままだと思うと、苦笑いのような吐息が漏れた。
 明らかに普通とは異なる環境の中、それを問うても無駄だと悟ったのはいつだっただろう。
 無駄を悟り、知ることを諦めたことを後悔した瞬間ならば鮮明に覚えているのだが。

「なんだ?」
「いや……」

 まったくこちらに気をやっていないと思っていたはずのヴィンセントが声をかけてくる。
 何でもない、と答えようとして、ふと思いつく。
 自分の誕生日も知らないが、目の前の男の誕生日もまた知らない。
 ラジオからは相変わらず、気の早い冬の歌が流れてくる。見知らぬ他人の誕生日にかこつけて愛を叫ぶ歌。
 
「誕生日はいつだ?」
「何だ、突然に」
「知らないなと思っただけだ」
「……おかしな奴だな」

 軽口を返しながら、しばし遠い目をしている。

「そろそろかもしれないな」
「曖昧だな」
「時に今日は何月何日だ?」
「さあ」

 この部屋には、カレンダーなどというものは存在しない。
 時計すら無い。
 だが不便に思ったことはほとんど無かった。時を刻むことのない存在に、時を刻む存在など不要でしかない。
 時間など、とうにどこかに置いてきてしまったのだ。

「……じゅう…つ…じゅ…さんにち…ごごろ…じです……」

 ノイズ混じりの音声が、ふいに時刻を告げた。

「……だ、そうだ」
「ならば今日だな」
「今日?」
「ああ」
「それは目出度いな」
「そんなことはないと思うが」

 祝われるはずの当人は苦笑しているが、もはや何度目か解らない誕生日は、ヴィンセントにとって目出度いかどうかはともかく、セフィロスにとっては感謝すべき日であることは間違いない。

 窓際を離れ、グラスを二つとボトルを取りあげる。
 グラスの一つを今日の主役に手渡すと、ワインボトルの栓を抜き、二つのグラスを赤い液体で満たした。

「乾杯」

 この男が今ここに存在していることに。
 惜しみない感謝と祝福を。
 
 ふたつのグラスがぶつかり、小さな澄んだ音が部屋に響いた。



 



ホントに、エロの欠片もないハナシで、裏の更新待ってる方には申し訳ないorz
あんまり期待せずに加筆部分をお待ちください(苦笑)