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ついつい

ちょっと息抜きのつもりが、なんかがっつりやらかしてしまった……
しかし楽しい。

ファイル 364-1.jpg


スキャナ使うのが面倒だったので(作業用のPCを立ち上げなければならない)、携帯で写真撮ったものですが。ちゃんとしたのはまた後日。
ほんっっっっとおおおに珍しく、というかたぶんアップするのは初めてですが、アナログで描いてます。
今回のイメージ絵でした。
基本的にデジタル絵ばっかりなので、紙に描くと、いつも以上に構図がグダグダですね……ほら、デジタルだと、余白足すのも場所動かすのも自由だから多少の修正は効くわけですよ……
最近、たまに美術方面のプロの方(絵画などを専門にしてる方やデザイナーさんなど)とお話する機会があるんですが、会話の中で「デジタルでしか絵を描いたことがないっていう人が出てくる時代が来てるんだね」という話が出たのが印象的でした。
自分の作品(もちろん同人作品じゃないですよw)を見てもらうこともあるんですが、私の作品はデジタル前提の感性だとも言われました。あんまり自覚はないんですけど。
専門が違う人達と話していると、絵を描くということ一つとっても考え方が根本的に違っていたりして面白いです。
なので、私も、最近出来るだけアナログでも絵を描くようにしているんですけれども。難しいねー。

そんな余談は置いておいて、本題の小説行こう。


 館の重厚な扉を押し開けると、雨の湿った匂いが鼻についた。
 扉を出て三歩も歩かぬうちに、子猫のニァという声が耳に届く。
 てっきり足元に寄ってくるかと思ったのだが、声がするのは真下からではなかった。
 
「待って、ね、暴れないで……」

 ニャァニャァと鳴く子猫は、一人の少女に抱かれていた。
 薄水色のドレスに見覚えがある。
 先ほど、館の中ですれ違った蜂蜜色の髪の少女だ。
 彼女は、腕の中の子猫がカインに向かって鳴いていることに気付くと、猫を逃がさぬよう必死に抱きながら、彼の前まで小走りに駆け寄ってきた。
 歳の頃はまだ7、8歳だろうか。
 着ているドレスと、長い髪に揺れるドレスと同じ色のリボンは上等なシルク。袖口のレースはとても繊細で、こんな織りはおそらくトロイアのものだ。ここからトロイアは遠い。手に入れるのも難しい品だった。
 そんな少女の出で立ちに、かなり裕福な家の令嬢なのだろう、とカインは思う。
 石段から少し離れたところに、若い男が雨の中傘を差して立っているのが見える。彼女の従者だろう。

 目の前に立った少女を、カインは見下ろす。
 彼女の腕の中で、子猫がニァと鳴き、尻尾を振った。 
「あの、この猫、あなたの……?」
 戸惑いがちに、少女がカインを見上げ口を開いた。
 鈴を振るような、済んだ声。見知らぬ男、それも明らかに魔導士でないカインは、彼女の目には奇異に映るはずだ。
 だが少女は戸惑いの色は滲ませながらも、決して臆することなく、カインに問う。

「…………、いや」

 迷う必要はなかったはずだ。
 なぜなら、この銀の猫は、カインが飼っていた猫ではない。
 散々、そう自分に言い聞かせてきたはずだ。
 現に今だって、カインはこの子猫を街中に置き去りにするためにここに来たのだ。
 自分の猫ではない、そう少女に即答すればいいだけだ。
 何を一瞬迷ったのだろう。
 
「でも……ないてるわ」
「……そうだな」
 ミィミィと、子猫が少女の腕の中で鳴いている。その鳴き声は、腹が減った時の情けない鳴き方や、カインを呼ぶ時の少し生意気な鳴き方とも、そして甘える時の鳴き方とも違っていた。
 そんな風に鳴き続ける子猫とカインを、少女は見比べる。 
「連れて帰るつもりなのか?」
 少女の腕の中からこちらへ前足を伸ばす子猫を見下ろし、カインはそう尋ねた。
「あなたの猫でないのなら、わたしが連れて帰るわ。
 ずっとここでだれかを待っているみたいだったから、お父様には先に帰っていただいて、わたしもここで待っていたの。
 この子にはご主人様がいるのかもしれないと思って」
「そうか」
「誰の猫でもないのなら、お屋敷に連れてきてかまわないってお父様はおっしゃったの」

 幸運な猫だと思う。
 きっと彼女の元で、これからは幸せに暮らしていけるに違いない。
 修行に明け暮れ、ろくに面倒も見ない自分の傍よりも、ずっと幸せに生きていけるはずだ。
 
「……だったら早く連れて帰るんだな」
「ほんとうに、いいの?」
「ああ」

 カインの答えに、ミィと一度子猫が鳴いた。
 ずっと鳴き続けていたのに、ぱたりとその声が止む。
 
「ありがとう」

 少女はカインに笑うと、くるりと踵を返した。
 従者とおぼしき男が、彼女に傘を差し出す。
 
 石段を下りたところで、少女が振り返った。
 何故か動くことが出来ず、去っていく彼女を見つめていたカインを、再び少女が見上げた。
 その腕の中で、銀色の子猫もまた、カインをじっと見つめている。
 幸せになれ、とも、じゃあな、とも、声をかけることは出来なかった。
 あれだけ執拗に鳴いていた子猫も、ニァともミィとも鳴かなかった。
 
 少女はカインに礼を言うように頭を下げると、雨の中、街の中心部へ向かって去っていった。
 
 
 
「でも……ないてるわ」

 頭の中で、少女が先ほど口にした言葉が響く。
 だが、その声は、銀色の子猫を抱いた少女のものではなく、幼馴染みの彼女のものだ。
 脳裏に浮かぶ彼女は、銀髪の親友の背を抱いている。

 あれからちっとも自分は変わっていない。
 幸せになれ、とも、またな、とも、二人に何も言えずに故郷を出てきたあの日から、何も変わっていないのだ。



一応これで本編(?)はおしまい。
残るはエピローグです。
やっと回想とか夢じゃないセシルさん出てくるよ!!!

カインさんが果たしてこの女の子と出会わなかった場合に、猫を捨てることが出来たのか、というとたぶん、いや間違いなく出来なかっただろうなーと思ってます。
そういうところで情を切り捨てるのがとても下手な人だと思います。
どんな理由があっても弱者に手を上げられない人だろうなーと。
ディシディアもそうでしたよね。仲間を眠らせるって目的があったけど、たぶんカインは女性陣を攻撃出来ないだろうなーと思ってたら、案の定、ティファに流されたしwww
逆にセシルさんは、確固たる理由があればたとえ相手がローザでも鳩尾に拳入れる人だと思ってます。
ゲーム本編で、ゼムスのところに乗り込むってときに、ローザとリディアを置いていこうとしてたシーンなんかも、あれはカインさんが先に口を出してしまったので結局一緒に行くことになったけど、そうでなければセシルは無理矢理にでもローザ達を置いていっただろうな、と(それが解ってたから、カインさんは口挟んだんだと思う。セシルもローザも引かないことは一番よく解ってるから。そこでローザ側につくのがまたカインさんらしい)。
あー、実際TAがそうだったなぁ。ローザ相手に国王としての命令とか言い出してまで、逃がしましたよね。あそこでローザが引かなかったら(10代の彼女だったら引かなかったはず)、たぶん手刀一発で眠らせてシドにローザを預けただろうと思います。
方向性は違うけど、セシルもカインも妙なところで不器用だよなぁ。そこが萌えるんだけど。

ではまた明日。